亜麻はラテン名をLinum Usitatissimumと言いますが、これをわかりやすい言葉に言い換えると、「最も有益な亜麻植物」という意味になります。
亜麻またはリネンというのは、亜麻植物の繊維から紡がれた糸です。 フランダース地方では、亜麻の種は3月末から4月の初めに懸けて蒔かれます。茎がまっすぐに育つように、種はそれぞれ空間をあけすぎず、近づけて蒔かれます。その成長には100日ほどしか、かかりません。収穫は7月の終わり頃に始まり、8月初旬には終了します。青や白の花はとても優雅ですが、たった一日で終わってしまいます。

亜麻はフランダースの歴史において、とても重要なものです。何百年もの長きに渡って、フランダース地方は世界中でも有数の亜麻生産地の一つだったのです。この地域には小さな川がいくつもあり、亜麻植物が育つには理想的な地でした。また均質の土、程よい日光、短い夜と暖かく湿った気候が亜麻植物の成長には、良い要因となっていました。
つまり、最も強く、最も古い植物性の繊維の成長には自然がとても重要ということです。
亜麻の歴史は、長い年月をさかのぼります。中世の頃、リネンの布は、当時最も清潔な織物であったため、医療用として使用されました。
17世紀、レースはステータスシンボルとなりました。結果として、上流階級の人々は自分の肖像画を有名な芸術家に描いて欲しいと思うようになりました。例えば、フランダースの画家ヴァン・ダイクは1632年に繊細なボビンレースの襟とカフスを身につけたヘンリエッタ・マリア王妃の肖像を描きました。ヴァン・ダイクは、こういった初期の油絵を描くのに、亜麻植物から抽出された亜麻仁油を使いました。
絵はリネン布の上に描かれました。リネンの布地は絵が描かれる段階で濡れた時でも、その耐久性と強さを維持しました。キャンバスの繊維は、ワックスを含んだ中空の構造になっています。そのワックスが、バクテリアを寄せ付けず、それによって、私たちは今なお、このような歴史的絵画を鑑賞し、賞賛することができるのです。

スコットランド王妃・アイルランド王妃
18世紀には、亜麻の栽培は大きな成功を収めます。多くの家庭がフランダースの亜麻産業に従事しました。18世紀、人々は衣服を汚れから守るため、リネンを下着として素肌に身につけていました。
しかし、レースがその最盛期に到達したため、リネン糸への需要は高くなりすぎてしまいました。
18世紀終わり頃、イギリスで多軸紡績機(spinning jenny)が導入されたことで、亜麻の紡績は、フランダースにおけるその重要な役割を失い始めました。
亜麻はリネン糸を供給するだけでなく、その種は、染色、絵の具、インク、化粧品や床の塗料を作るための油を含んでいるので、亜麻の栽培には関心が注がれるべきです。
ベルギーには、品質の優れたリネン糸がありました。ベルギーのリネン糸は、今でも美しいものですが、糸の太さは以前のものとは大きく異なります。土壌や川の汚染のため、超極細糸を紡ぐことができなくなってしまったのです。

2003年、ユネスコは京都で開かれた「世界水フォーラム」で水に関する報告を発表しました。
「 我々人類が直面するすべての社会的、そして自然的危機の中で、水危機が我々の生き残り、そして地球という惑星の生き残りの中心に存在する危機である。」と、松浦晃一郎ユネスコ事務局長は語りました。

「子供達の健康から、国家が国民の食料を確保する能力まで、生活のあらゆる面に及ぶこの危機の影響から逃れられる地域は無い。」と松浦氏は言います。「水に対する需要が異常な早さで劇的に増える中、水供給量は下降している。今から20年ほどで、世界の人々の一人当たりの水供給量の平均は、3分の1まで減少すると見られている。」
今、世界は同時不況にありますが、これは修復が可能です。
人類が自然に与えたダメージは、回復がより困難になるでしょう。私たちは、すべては自然が生み出すものということを自覚し、最大の敬意を持って生活するべきなのです。
ベルギー
国立リネン博物館 (Nationaal vlas, linen en kantmuseum)
Etienne Sabbelaan 4, 8500 Kortlijk
http://www.kortrijk.be/vlasmuseum
日本
日本に住み、私はリネンが日常生活にとても役立つことを発見しました。
日本の夏はたいへんな暑さです。毎年、暑さが増しているように思われます。
ファッションデザイナー達は、体を守るために、リネンを身につけることを提案しています。麻は、湿ったと感じるようになるまでに、その重量の20倍もの水分を吸収することができます。麻布は触ると冷たく、乾いた感じがします。
私が日本に住み始めた頃、マスクをした人をたくさん見かけるのはどうしてか、と不思議に思っていました。
実のところ、これは何百年も起源をさかのぼる習慣です。紀元前650年頃に、リネンを口の保護として使うようになったとされています。リネンは咳止めとして推薦されていたのです。
若い頃から、私は時々、肌トラブルに悩まされていました。数年前、私は北海道で亜麻を栽培している日本企業を紹介されました。この会社は、亜麻植物からとれるエキス剤を生産しています。さっそく毎日このサプリメントを飲むようにしたのですが、肌トラブルは、いつの間にかなくなってしまいました。なんと言う偶然でしょう。私はいつも、講演の中でベルギーのリネンについて話してきましたが、そんな私の抱えていた問題を日本の亜麻が解決してくれたのです。
これは「自然を尊重することは、世界中の人々に奇跡をもたらすことができる」という証明です。
